【2023年9月号】片柳弘史神父とよむ こどものせかい

2023.08.07   エッセイ

 

 


子どもだけの特別な恵み

 

 おかあさんと会えない悲しみを背負った、元捨て猫の「おいら」が、自分にしか見えない不思議な友だち、ゾリックとの出会いを通して明るい猫になっていくこの物語。子どもたちは、きっと気に入ってくれるでしょう。ゾリックのような、自分にしか見えないお友だちと出会う子どもは、結構、たくさんいるのです。

 わたしにも、子どもの頃、目に見えない友だちがいました。本当にいたのか、想像力で作り上げたのか、それはわかりません。ですが、わたしの目にはその子がいるのがはっきり見えたのです。その子はいつも、わたしのいうことを聞いて、一緒になかよく遊んでくれました。ガキ大将の子分で、いつも誰かのいいなりだったわたしは、その子と遊ぶことで慰められ、つらい気持ちを乗り切ることができたのです。

 ゾリックのようなお友だちは、神さまが、子どもだけに与えてくれる特別な恵みなのかもしれません。ゾリックと遊んでいるうちに「おいら」の心にともった、やさしくて明るい光。それは、「ぼくは一人じゃない、ぼくを大切に思ってくれる人がいる」という希望の光であり、ゾリックとの間に生まれた友情の光なのでしょう。その光は、おかあさんのぬくもりの記憶にも重なるものでした。その光を、愛の光と呼んでもいいかもしれません。いま世界中に、傷つき、悲しんでいる子どもがどれほどたくさんいるでしょう。そんな子どもたちのもとに、神さまが目に見えない友だちを送ってくださるよう祈らずにいられません。
 
 
 

 

◇2023年9月号「ゾリックと  おいら」 阪口 笑子・絵と文◇

 

 

 

▼ 片柳弘史 プロフィール

カトリック宇部教会主任司祭。1971年埼玉県生まれ。1994年慶応大学法学部法律学科卒業。1994〜95年インド・コルカタにてボランティア活動。マザー・テレサから神父への道を勧められる。1998年イエズス会入会。2008年上智大学大学院神学研究科修了。同年、司祭叙階。現在は山口県宇部市で3つの教会の主任司祭、3つの幼稚園の講師、刑務所の教誨師。

◆著作に『みんなのやさしいおかあさん マザー・テレサ』(絵・つるみゆき/文・片柳弘史、至光社)『こころの深呼吸〜気づきと癒しの言葉366』『やさしさの贈り物〜日々に寄り添う言葉366』(教文館)、『世界で一番たいせつなあなたへ〜マザー・テレサからの贈り物』『何を信じて生きるのか』(PHP研究所)『ひめくりすずめとなかまたち』(キリスト新聞社)など。

◆Eテレ『グレーテルのかまど〜マザー・テレサのチョコレート』、テレビ朝日『ぶっちゃけ寺〜キリスト教特集』などに出演。ブログtwitterfacebookを通しても情報発信している。

 

 


 

▼こどものせかい2023年9月号
 「ゾリックと  おいら」をみる

  

 


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