【2024年2月号】Editor's Room

2024.01.05   編集より

 

 この絵本は、作家の山崎陽子先生が書かれた朗読ミュージカルの作品『善造どんと狸汁』から生まれました。上演舞台では朗読の声だけでその情景が浮かんできますが、絵本では篠崎三朗先生の情感あふれる絵で、また新たな舞台が作り出されています。

 青と茶と白で描かれた絵は、ふわりと昔話のなかへ私たちを誘います。しんしんと降り続き積もった雪は音を消し、善造どんとたぬきの親子が雪景色のなかにしずかに現れます。

 善造どんの家の戸をたたくこだぬき、懸命に働くこだぬき、きちんと正座して、かあちゃんを助けてと懇願するこだぬき……その姿のなんて愛おしいこと。こだぬきと善造どんの表情やしぐさからは、いろいろな想いが伝わってきます。
 文にはないものが絵から伝わり、絵にないものが文から伝わってくる。絵本の絵と文は、互いにひとつの曲を違う楽器で奏でるように、その世界を深めていくのですね。
 
 作者のおふたりは、楽しい会話でいつもまわりの人を笑顔にしてくださいます。お会いしてもお電話でも、話を聞いてずっと笑い続けてしまう。その表現豊かな話術はもちろんのこと、ユーモアたっぷりに語られるので、おふたりに起こる出来事はなぜか不思議と、喜びも悲しみも、時には怒りさえもすべてが、心和む笑いにつつまれてしまうのです。
 そんなおふたりの、みんなを笑顔にする人の懐深さから、この涙ほろりの絵本は生まれたのだなあとしみじみ感じます。(M.K)

 

 

朗読ミュージカル「善造どんと狸汁」(公演チラシPDF)
  2024年2月9日/東京・内幸町ホールにて公演予定

◎朗読ミュージカル 山崎陽子の世界(公式サイト)

 

 

 
 

▼ いつも笑顔の篠崎三朗さん(絵本『ねこねこねこね』制作時/2018年)

 

 


 

▼こどものせかい2024年2月号
 「こだぬきの おねがい」をみる
 


▼ 作者のことば・プロフィール
  絵本づくりの仕事場より
 

 

▼ この絵本をもっとあじわう
  片柳弘史神父とよむ こどものせかい


 

 

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