【2024年6月号】片柳弘史神父とよむ こどものせかい

2024.05.07   エッセイ

 

 


一緒に育つ

 

 わたしが働いている幼稚園では、年少の小さな子どもたちも、年中、年長のお兄さん、お姉さんたちも、一つの教室で保育しています。成長段階が違うので難しいこともありますが、なによりすばらしいのは、子どもたちが助けあいながら成長していくことです。

 小さな子どもたちが困ってるのを見ると、少し大きな子どもたちは放っておくことができません。「どうしたの」「こうしたらいいよ」「手伝ってあげる」とやさしく声をかけ、小さな子どもたちを守ってあげるのです。小さな子どもたちは、お兄さんやお姉さんたちのやさしさの中で育っていくといっていいでしょう。

 同時に、小さな子どもたちをお世話することで、お兄さんやお姉さんたちも成長していきます。「困っている子を放っておけない」というやさしい気持ち、「今度はこれをしてあげよう、あれもしてあげよう」という工夫や努力、自分に与えられた力を誰かのために活かす喜び、最後までお世話してあげる責任感など、小さな子どもたちとの関りの中で、お兄さんやお姉さんの中にたくさんの大切なものが育っていくのです。

 この絵本に出てくる子猫と犬も、同じように成長していきます。子猫は、犬のやさしさに守られながら成長し、犬は子猫を守ることによって成長していくのです。そんな二匹の成長を、森の豊かな自然が包み込んでいきます。絵本のページをめくりながら、一緒に生きることのすばらしさ、小さな命を包み込むこの世界のすばらしさへの感謝がこみあげてきて、心があたたかくなりました。育ててもらうことで成長し、育てることで成長するというのは、親子の関係でも同じでしょう。「ずーっと いっしょ」の喜びを、この絵本を読みながら、親子で味わってもらえたらと思います。
 
 
 
 


 

◇2024年6月号「ずーっと いっしょ ぼくらのもりの1ねん」 河原 まり子・絵と文◇

 

 

 

▼ 片柳弘史 プロフィール

カトリック宇部教会主任司祭。1971年埼玉県生まれ。1994年慶応大学法学部法律学科卒業。1994〜95年インド・コルカタにてボランティア活動。マザー・テレサから神父への道を勧められる。1998年イエズス会入会。2008年上智大学大学院神学研究科修了。同年、司祭叙階。現在は山口県宇部市で3つの教会の主任司祭、3つの幼稚園の講師、刑務所の教誨師。

◆著作に『みんなのやさしいおかあさん マザー・テレサ』(絵・つるみゆき/文・片柳弘史、至光社)『こころの深呼吸〜気づきと癒しの言葉366』『やさしさの贈り物〜日々に寄り添う言葉366』(教文館)、『世界で一番たいせつなあなたへ〜マザー・テレサからの贈り物』『何を信じて生きるのか』(PHP研究所)『ひめくりすずめとなかまたち』(キリスト新聞社)など。

◆Eテレ『グレーテルのかまど〜マザー・テレサのチョコレート』、テレビ朝日『ぶっちゃけ寺〜キリスト教特集』などに出演。ブログX(旧Twitter)facebookを通しても情報発信している。

 

 


 

▼こどものせかい2024年6月号
 『ずーっと いっしょ ぼくらの もりの 1ねん』をみる

  

 


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