【2023年6月号】片柳弘史神父とよむ こどものせかい

2023.05.05   エッセイ

 

 


できることに気づく

 

 猫のおかあさんと同じようにできないことに、悩み始めたかわいらしい子犬。この子犬の姿は、他人との違いに悩みながら成長してゆく子どもたちと、そしてわたしたち自身とぴったり重なるようです。

 わたしたちはつい、他人と自分を比べて、「あの人にはあんなことができるのに、わたしにはできない」と考えてしまいがちです。他人についてはできることだけを見て、自分についてはできないことだけを見てしまうのです。それは、ずいぶん不公平な考え方だといえるでしょう。なぜなら、わたしたちにも、できることが必ずあるからです。
 
 犬との出会いを通して、子犬は自分にもできることがあると気づきます。自分には、大きな声で、力強くほえることができる。野原を走り回って、楽しいと感じることができる。そのことに気づいたとき、子犬は、自分が何者であるかに気づきます。自分が犬であると気づき、自分を受け入れることができたのです。
 
 これこそ、まさに成長だといってよいでしょう。成長とは、さまざまな体験を通して、自分にできないこと、自分にできることの両方を知り、自分が誰であるかを知ること。自分が誰であるかを知って、自分を受け入れることなのです。

 自分が誰であるかを知り、自分を受け入れる。それは一生の課題だといってよいでしょう。子どもたちだけでなく、わたしたち自身も、日々の生活の中で子どもたちと一緒にさまざまなことを体験し、子どもたちと一緒に成長してゆくのです。この絵本が、自分と出会う長い旅への入り口になりますように。
 

 

◇2023年6月号「ぼく もしかしたら」 河原まり子・絵と文◇

 

 

 

▼ 片柳弘史 プロフィール

カトリック宇部教会主任司祭。1971年埼玉県生まれ。1994年慶応大学法学部法律学科卒業。1994〜95年インド・コルカタにてボランティア活動。マザー・テレサから神父への道を勧められる。1998年イエズス会入会。2008年上智大学大学院神学研究科修了。同年、司祭叙階。現在は山口県宇部市で3つの教会の主任司祭、3つの幼稚園の講師、刑務所の教誨師。

◆著作に『みんなのやさしいおかあさん マザー・テレサ』(絵・つるみゆき/文・片柳弘史、至光社)『こころの深呼吸〜気づきと癒しの言葉366』『やさしさの贈り物〜日々に寄り添う言葉366』(教文館)、『世界で一番たいせつなあなたへ〜マザー・テレサからの贈り物』『何を信じて生きるのか』(PHP研究所)『ひめくりすずめとなかまたち』(キリスト新聞社)など。

◆Eテレ『グレーテルのかまど〜マザー・テレサのチョコレート』、テレビ朝日『ぶっちゃけ寺〜キリスト教特集』などに出演。ブログtwitterfacebookを通しても情報発信している。

 

 


 

▼こどものせかい2023年6月号「ぼく もしかしたら」をみる

  

 

 

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