【2023年7月号】片柳弘史神父とよむ こどものせかい

2023.06.05   エッセイ

 

 


生きていくための力

 

 カモの親子の引っ越しの一日を描いたこの絵本。前半では、お母さんガモの活躍が光っています。子ガモたちを狙うカラスを追いはらい、恐ろしい爪と歯をもった猫にさえ飛びかかっていくお母さんガモ。何が、お母さんガモにそんな力を与えたのでしょう。それは、自分を頼って生きる、かわいらしい子ガモたちの存在だと思います。子ガモたちへの愛が、お母さんに力を与えたのです。

 絵本の後半では、子ガモたちの頑張りが光っています。子ガモのみっちゃんを助けるために飛び立ったお母さんガモに続いて、他の子ガモたちもいっせいに空へ飛び立ったのです。なぜそんなことができたのでしょう。子ガモたちに力を与えたのは、お母さんガモの存在だと思います。「お母さんはわたしたちを愛している。お母さんと一緒なら、何もこわいことなどない」、その確信が、子どもたちに力を与えたのです。

 子どもたちへの愛に動かされて懸命に生きるお母さんガモと、お母さんの愛に動かされて頑張る子ガモたち。この絵本がわたしたちに教えてくれるのは、愛こそ、わたしたちが生きていくための力だということです。子どもにとっても、大人にとっても、生きていくのは難しいことに違いありません。それでもわたしたちが、毎日を頑張って生きられるのは、「わたしは愛されている。決してひとりぼっちではない」という確信があるからなのです。愛こそ、わたしたちが生きていくための力。この絵本を読みながら、改めてそのことを心に刻みたいと思います。
 
 

 

◇2023年7月号「ママと とんだ」 みやもとただお・絵と文◇

 

 

 

▼ 片柳弘史 プロフィール

カトリック宇部教会主任司祭。1971年埼玉県生まれ。1994年慶応大学法学部法律学科卒業。1994〜95年インド・コルカタにてボランティア活動。マザー・テレサから神父への道を勧められる。1998年イエズス会入会。2008年上智大学大学院神学研究科修了。同年、司祭叙階。現在は山口県宇部市で3つの教会の主任司祭、3つの幼稚園の講師、刑務所の教誨師。

◆著作に『みんなのやさしいおかあさん マザー・テレサ』(絵・つるみゆき/文・片柳弘史、至光社)『こころの深呼吸〜気づきと癒しの言葉366』『やさしさの贈り物〜日々に寄り添う言葉366』(教文館)、『世界で一番たいせつなあなたへ〜マザー・テレサからの贈り物』『何を信じて生きるのか』(PHP研究所)『ひめくりすずめとなかまたち』(キリスト新聞社)など。

◆Eテレ『グレーテルのかまど〜マザー・テレサのチョコレート』、テレビ朝日『ぶっちゃけ寺〜キリスト教特集』などに出演。ブログtwitterfacebookを通しても情報発信している。

 

 


 

▼こどものせかい2023年7月号「ママと とんだ」をみる

  

 

 

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