【2023年12月号】Editor's Room

2023.11.06   編集より

 

 センバ・太郎先生の絵を見ると、ふわっと、からだのなかに何かが目覚める。探していた宝箱を見つけて開けたときのような、その絵を見ると、からだの奥の方で忘れていたものが、さわさわと動き出す……。
 
 そう、子どもの頃、この絵をたくさん見ていたから。特にお話を覚えているわけではないけれど、わくわくして夢中になっていた時間、その本の紙の質感やにおいなども、なんだか、からだに記憶が残っているような気がします。

 『こどものせかい』には1958年から作品を描いていただきました。その頃は『こどものせかい』は今のようなひとつのおはなしの絵本ではなく、ページごとに違う画家さんの絵と詩からできていました。センバ先生は見開きにコマ割りで描く、漫画家として活躍された先生ならではの描き方で、1980年まで130点にもおよぶ作品を残してくださったことは本当に驚きと感謝でいっぱいです。

 子どもたちは、たくさんの絵本に出会うことでしょう。何度も何度も見るものもあれば、一度きりで過ぎていくものもあるでしょう。何が、どんなふうに、心の奥深くに残っていくかはわかりません。大人になって、ふと、「あ、これ覚えてる…」と心の宝箱を開けて忘れていたものを見つけた時の、驚きとよろこび、くすぐったいような不思議な感覚。大切なものが、またきらきらと輝きはじめるのです。
 
 子どもたちの宝箱が、時をこえて輝くものでいっぱいになりますように……。 (MK)
 
 
 
 

▼ 『こどものせかい』に掲載されていたコマ割り画

『まきひろい』センバ・太郎 文・絵(1971年5月号)
 


『あそんでくれない』センバ・太郎 絵と文(1972年10月号)

 

▼ カエルがお好きだったセンバ先生。絵本にもよくカエルを登場させていました。
(今月の絵本の中でも意外な場所に… ぜひ、さがしてみてくださいね)

 


 

▼こどものせかい2023年12月号
 「みんなの クリスマス」をみる
 


▼ 作者のことば・プロフィール
  絵本づくりの仕事場より
 

 

▼ この絵本をもっとあじわう
  片柳弘史神父とよむ こどものせかい


 

 

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