【2025年4月号・見本】片柳弘史神父とよむ こどものせかい

2024.11.01   エッセイ

 

 


世界を造る

 

 聖書の初めに、神さまが世界を造る様子を描いた『創世記』というお話が出てきます。「この世界は、どうしてこんなにきれいなんだろう。よくできているんだろう」という子どもたちの質問に、大人が「それはね、神さまがこの世界を造ったからだよ」と答え、神さまが世界を造る様子を、たのしく生き生きと話し始める。そんな風にして作られたお話だとわたしは思っています。

 『創世記』の中で、神さまは真っ暗な世界にまず光を造り、次に空と海を造り、鳥や魚を造り、大地とそこに住むすべての生き物たちを造ります。そして、最後に自分が造ったすべてのものを見て「極めて良い」、つまり「とてもよくできた」と思うのです。自分の思った通りに世界を造っていき、とてもすばらしい世界ができたのを見て、神さまはとてもうれしかったのでしょう。

 砂場にまちを作る子どもたちの姿を描いたこの絵本も、最後は、「みてみて、できたよ、みんなのまち」という喜びに満ちた言葉で終わっています。山を造り、トンネルを造り、おうちを造り、川を造って自分たちが思いのままにできあがったまちが、こんなにもよくできた。もううれしくて仕方がない。「みてみて、先生」「みてみて、お父さんお母さん」と思わず叫ぶ子どもたちの声が聞こえてくるような言葉です。

 神さまが造った世界は、とてもよくできている。神さまが造った世界の中に人間が造ったまちも、とてもよくできている。つまり、この世界にあるものは、すべて、とてもよくできている。こんなすばらしい世界の中で生きられるのは、なんてうれしく、楽しいことなんだろう。『創世記』とつなげて読むとき、『すなばあそび』というこの絵本は、そんな素敵な世界の見方をわたしたちに教えてくれます。神さまが造ったすばらしい世界を、人間たちが、力を合わせて、よりいっそうすばらしい世界に仕上げていくのです。これから幼稚園・保育園で新しい生活を始める子どもたちが、それぞれの場所で、それぞれにすばらしい世界を造り上げていくことができるよう心からお祈りしています。
 
 
 
 


 

 

◇2025年4月号「すなばあそび」 近藤えり・絵と文◇

 

 

 

 

 

 

▼ 片柳弘史 プロフィール

カトリック宇部教会主任司祭。1971年埼玉県生まれ。1994年慶応大学法学部法律学科卒業。1994〜95年インド・コルカタにてボランティア活動。マザー・テレサから神父への道を勧められる。1998年イエズス会入会。2008年上智大学大学院神学研究科修了。同年、司祭叙階。現在は山口県宇部市で3つの教会の主任司祭、3つの幼稚園の講師、刑務所の教誨師。

◆著作に『みんなのやさしいおかあさん マザー・テレサ』(絵・つるみゆき/文・片柳弘史、至光社)『こころの深呼吸〜気づきと癒しの言葉366』『やさしさの贈り物〜日々に寄り添う言葉366』(教文館)、『世界で一番たいせつなあなたへ〜マザー・テレサからの贈り物』『何を信じて生きるのか』(PHP研究所)『ひめくりすずめとなかまたち』(キリスト新聞社)など。

◆Eテレ『グレーテルのかまど〜マザー・テレサのチョコレート』、テレビ朝日『ぶっちゃけ寺〜キリスト教特集』などに出演。ブログX(旧Twitter)facebookを通しても情報発信している。

 

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