【2024年12月号】片柳弘史神父とよむ こどものせかい

 

　サンタクロースの服を着てクリスマスのケーキやクッキーを売り歩く、お菓子屋さんのおにいちゃん。その後についていったことから、これまでとは違う特別なクリスマス、本物のイエスさまに出会うクリスマスを体験した男の子の話です。
　男の子は、なぜ毎日、おにいちゃんと一緒に広場へ出かけ、ケーキやクッキーを売るのを手伝ったのでしょう。それは、町の人たちが、大喜びでケーキやクッキーを買ってくれたからだと思います。うれしそうな顔でケーキやクッキーを手に取り、にっこり笑顔を浮かべながら家に帰って行く人たちの姿を見て、男の子はとてもうれしくなったのです。男の子は、これまで味わったことのない幸せ、みんなを幸せにする幸せに気づいた。そう言ってもいいでしょう。
　本物のサンタクロースも、この幸せ、みんなを幸せにする幸せのためだけに生きている人だと言っていいでしょう。サンタクロースはみんなにプレゼントを配りますが、配り終わって家に帰ったとき、「お疲れさま、これが今日の仕事のごほうびだよ」といってサンタクロースに何かをくれる人はいません。ですが、それでも毎年、一生懸命に準備して世界中のみんなのところにプレゼントを届け続けるのは、プレゼントを待っている子どもたちの笑顔を見たいから、世界中の子どもたちを幸せにしたいからなのです。サンタクロースにとっては、世界中の子どもたちの喜ぶ笑顔こそが、何よりうれしいプレゼントなのです。
　ケーキやクッキーをすっかり売ってしまい、空っぽの袋を持って道を歩いているところで、男の子は教会のクリスマスの行列に出会います。そして、羊飼いの役で、クリスマスの劇に出ることになるのです。このクリスマスの劇の中で、とても不思議なことが起こりました。男の子は、飼い葉桶の中に寝かされている本物のイエスさまと出会ったのです。なぜそんな不思議なことが起こったのか、それはきっと、男の子の心の中に本物のイエスさまがいたからでしょう。「今日も、町の人たちを幸せにできて本当によかったなぁ」と思う男の子の心の中に、「世界中の人たちを幸せにしたい。みんなの喜ぶ笑顔が見たい」と思って生きたイエスさまと同じ愛が宿っていた。だからこそ、男の子は、本物のイエスさまに会うことができた。わたしはそんな風に思います。今年のクリスマスに、子どもたちが本物のイエスさまの愛を体験し、本物のイエスさまと出会うことができるよう、心からお祈りしています。