【2025年2月号】片柳弘史神父とよむ こどものせかい

2025.01.06   エッセイ

 

 


愛のしるし

 

 友だちのくまくんが目を覚ますのを待ちわびた、はりねずみやきつね、うさぎ、りすたちが、くまくんのために、みんなで雪だるまを作ったお話です。起きてきたくまくんは、雪だるまを見てびっくり仰天。とてもうれしい気持ちになって、みんなのもとに歩き始めるのでした。
 このお話を読んで、最近あったうれしいことを思い出しました。地震で大きな被害を受けた、能登半島の幼稚園にお見舞いに行ったときのことです。わたしがその幼稚園の玄関に入ると、とても目立つところに、どこかで見た色紙が一枚飾ってあったのです。なんと、わたしが担当している幼稚園の子どもたちが、地震のすぐ後に書いて送った色紙でした。子どもたちがそれぞれ自分の似顔絵を描いて送った色紙、その色紙に込めた、「どうかがんばってください。いつも忘れずに祈っています」という子どもたちの思いは、700キロの距離を越えて、遠く山口県から能登半島までしっかり届いていたのです。
 最近はみんなスマホを持っているので、短いメッセージなどを使って、自分の思いを相手に簡単に届けることができます。でも、どんなメッセージも、子どもたちが時間をかけ、思いを込めて一生懸命に描いた絵にはかなわないでしょう。その絵は、みんなの思いの結晶であり、みんなの愛のしるしだからです。
 はりねずみたちが作った雪だるまも、くまくんにとって、みんなの愛の目に見えるしるしでした。とてもかわいらしくできた雪だるまを見たくまくんは、「ともだちっていいな」と思いました。雪だるまに込められたみんなの思いは、確かにくまくんに届いたのです。わたしの友人の一人は、子どもが10年も前に書いてくれた自分の似顔絵を、財布の中にいれて大切にいつも持っています。絵や作品として形になった思いは、時間を越え、いつまでも相手を励まし続けることさえできるのです。時間をかけ、真心を込めて、自分の思いを形にする。愛のしるしを誰かに届ける。そのことの大切さを、この絵本から改めて教わったような気がします。
 
 
 


 

 

◇ 2025年2月号「ともだちって いいな」◇
高木さんご・絵と文

 

 

 

 

 

 

 

▼ 片柳弘史 プロフィール

カトリック宇部教会主任司祭。1971年埼玉県生まれ。1994年慶応大学法学部法律学科卒業。1994〜95年インド・コルカタにてボランティア活動。マザー・テレサから神父への道を勧められる。1998年イエズス会入会。2008年上智大学大学院神学研究科修了。同年、司祭叙階。現在は山口県宇部市で3つの教会の主任司祭、3つの幼稚園の講師、刑務所の教誨師。

◆著作に『みんなのやさしいおかあさん マザー・テレサ』(絵・つるみゆき/文・片柳弘史、至光社)『こころの深呼吸〜気づきと癒しの言葉366』『やさしさの贈り物〜日々に寄り添う言葉366』(教文館)、『世界で一番たいせつなあなたへ〜マザー・テレサからの贈り物』『何を信じて生きるのか』(PHP研究所)『ひめくりすずめとなかまたち』(キリスト新聞社)など。

◆Eテレ『グレーテルのかまど〜マザー・テレサのチョコレート』、テレビ朝日『ぶっちゃけ寺〜キリスト教特集』などに出演。ブログX(旧Twitter)facebookを通しても情報発信している。

 

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